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2026/02/26『白と黒の檻』

動物園のパンダが死んだ日、

町は静まり返った。

日本で生まれた唯一の雄、

名前は「トモカズ」。

白と黒の完璧な対称は、

まるで作り物みたいに整っていた。

私は飼育員だった。

誰よりも近くで、トモカズを見ていた。

誰よりも長く。

トモカズは、笑っているような顔を

していた。

けれど、あの目は笑っていない。

黒い縁取りの奥から、

じっとこちらを見つめていた。

観客には愛嬌を振りまくのに、

私が檻に入ると動きを止める。

竹を噛む音だけが、やけに大きく響いた。

「懐いてないのかな」

同僚は笑った。

でも違う。

あれは観察だ。

観察されているのは、私の方だった。

ある夜、当直で一人きりだった。

防犯カメラのモニターに映るトモカズが、

動かない。

不自然なくらい、止まっている。

次の瞬間、顔だけがゆっくりこちらを

向いた。

カメラ越しに、目が合った。

私は息を止めた。

画面越しなのに、確実に。

翌朝、檻の前に立つと、

足元に竹が並べられていた。

一直線に。

私の立ち位置へ向かって。

誰かの悪戯?

でも監視映像には何も映っていない。

トモカズはただ座っているだけだった。

笑っている。

それから毎日、竹の並びは変わった。

円。

十字。

最後は——私の名前の形。

私は誰にも言えなかった。

言ったら、きっと笑われる。

トモカズが死んだ日、

解剖の結果は「急性心不全」。

でも私は知っている。

あの日、檻に入った瞬間、

トモカズは立ち上がった。

そして初めて鳴いた。

低く、喉の奥で響くような声。

その目は、もう観察者の目ではなかった。

確認する目だった。

トモカズが死んでから一週間後。

私の部屋の前に、竹が置いてあった。

一直線に。

玄関まで。

ニュースでは言わない。

パンダの内臓から、人間のボタンが

出てきたことを。

それが、私の制服のものだったことを。

私はまだ思い出せない。

あの日、檻の中で何があったのか。

でも最近、鏡を見ると安心する。

白と黒は、左右対称だ。

完璧に。

今日も1日御安全に!!!🐼

鏡を見ると、安心する。

左右対称。

白と黒。

乱れがない。

人の顔は、本来、微妙に歪んでいる

はずなのに。

私はノートに自分の顔を描いてみた。

線を引いて、中央で折る。

完璧だった。

まるでスタンプみたいに。

動物園は、パンダ不在で客足が

減っていた。

同僚たちは次の個体の受け入れ

準備をしている。

「またすぐ来るさ。今度は雌らしいよ」

私はその言葉に、強い違和感を覚えた。

“また来る”。

同じ白と黒が。

同じ笑った顔が。

同じ目で、こちらを観察する。

夜、夢を見る。

檻の中にいるのは私だ。

ガラスの向こうで、人々が笑っている。

スマートフォンを向けて。

「かわいい」

その声が、だんだん遠のく。

代わりに、低い咀嚼音が響く。

竹を噛む音。

けれど私の手には竹はない。

白い毛が、腕から生えている。

黒い影が、目の周りを縁取っている。

私は目を覚ます。

そして必ず確認する。

自分の腕を。

顔を。

左右対称かどうかを。

トモカズの死亡記録を読み返した。

体重、体温、心拍。

最期の数値が、不自然に整いすぎている。

まるで、作られたデータみたいに。

防犯映像のバックアップを

こっそり確認した。

問題の夜。

私は檻に入っている。

トモカズの前に立っている。

しばらく、動かない。

そして——

画面が乱れる。

ノイズ。

白と黒のざらついた画面。

数秒後、私だけが立っている。

トモカズはいない。

「死体はどこから出てきたんだ?」

誰もそこを疑問に思っていない。

当たり前のように、翌朝、

檻の中に“あった”。

まるで最初からそこにあったみたいに。

最近、私は竹の匂いがわかる。

甘い。

青い。

遠くからでも。

そして、人の鼓動の音も。

規則的な、やわらかいリズム。

とても落ち着く。

新しいパンダが到着した。

輸送箱が開く。

ゆっくりと現れた白と黒。

観客が歓声をあげる。

私は、その目を見る。

一瞬。

はっきりと、理解した。

あれは私を見ていない。

鏡を見ている。

飼育マニュアルには書いていない。

“交代”の瞬間のことは。

パンダは滅多に繁殖しない。

代わりに、選ぶ。

観察し。

模倣し。

入れ替わる。

左右対称のものほど、適している。

その夜、私は檻の前に立つ。

ガラス越しに、白と黒が座っている。

静かに。

笑っている。

私はポケットからボタンを外す。

檻の前に、一直線に並べる。

ガラスに手を当てる。

向こうからも、同じ形の手が重なる。

ぴたりと。

完璧に。

翌朝。

ニュースが流れる。

「飼育員、失踪」

動物園はコメントを控えている。

パンダは、今日も人気だ。

愛嬌を振りまき、竹を食べる。

目の奥で、静かに観察しながら。

次の“左右対称”を。

今日も1日御安全に!!!🐼

最初に気づいたのは、小学生だった。

「ねえ、パンダってさ、

前より目が大きくない?」

母親は笑った。

「成長したんじゃない?」

でも写真を見比べると、確かに違う。

目の黒い縁が、ほんの少し広がっている。

まるで、何かを取り込んだみたいに。

動物園の来場者数は回復した。

いや、以前より増えている。

新しいパンダ——「ずかもと」は、

やけに人懐っこい。

ガラス越しに人の動きを真似る。

手を振れば振り返す。

首を傾げれば、同じ角度で傾げる。

左右対称に。

完璧に。

動画は拡散された。

「賢すぎる」

「中に人が入ってるみたい」

冗談のはずだった。

ある日、町で失踪事件が起きる。

大学生の女性。

最後の目撃情報は、動物園。

パンダの前で長時間、立ち尽くして

いたらしい。

スマホには動画が残っていた。

ガラス越しに、彼女とずかもとが

向かい合っている。

彼女が笑う。

ずかもとも笑う。

彼女が瞬きをする。

ずかもとは、瞬きをしない。

代わりに——

一瞬だけ。

黒い縁が広がる。

画面いっぱいに。

そこで動画は終わる。

町では妙な噂が広まった。

「最近、似た顔の人が増えてる」

左右対称すぎる顔。

整いすぎた目元。

笑ったときの口角の角度が、同じ。

偶然?

流行りの整形?

誰も深く追及しない。

だって、かわいいから。

夜の動物園。

監視カメラは、もう壊れていない。

はっきり映っている。

檻の扉が、内側から開く瞬間を。

白と黒が、ゆっくり外へ出る。

四足ではなく。

二本の足で。

背筋を伸ばして。

月明かりの下、影は細長い。

人の形に近い。

朝になると、ずかもと

は檻の中に戻っている。

何事もなかったように竹を噛む。

来場者は増え続ける。

鏡のように、ガラスの前に立つ。

笑う。

真似される。

揃っていく。

少しずつ。

少しずつ。

ニュースキャスターが原稿を読む。

左右対称の整った顔。

黒い縁取りのようなアイメイク。

完璧な笑顔。

「本日の動物園来場者数は過去最高です」

カメラが寄る。

その瞳の奥に、白い反射。

丸い光。

ガラス越しに見るあの目と、同じ。

今、町の人口は増えている。

統計上は。

失踪者も増えている。

統計上は。

でも数字は、妙に整っている。

ぴたりと。

左右対称に。

動物園は今日も開園する。

入園ゲートの上のロゴ。

白と黒の丸い顔。

その下に、新しいスローガンが掲げられた。

「あなたに、会いにいく。」

今日も1日御安全に!!!🐼

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