
獏郎は、もういない。
それでも――
“痕跡”だけが残っていた。
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朝。
事務所。
林田「……静かすぎるやろ」
長松「電話、一本も鳴らんですね…」
廣川「…異常やな」
沖は、何も言わず壁にもたれている。
天音だけが、薄く笑う。
梅おにぎり師匠はやっぱり何か食っている。
野高は交通渋滞に巻き込まれてまだ来ていない。
沼田は、爆睡。
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社長は管制表とにらめっこ。
「おかしい…こんな一気に…」
契約は、ほぼゼロ。
唯一残っていた得意先も――
消えた。
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そのとき。
一本の電話。
社長「はい、パンダ警備です」
相手「すみません、もう御社とは…」
社長「え?いや、あの現場は…」
相手「人が足りないって、大和田さんから…」
社長「……は?」
空気が止まる。
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社長「大和田…?」
相手「辞める前に、説明受けましたよ」
相手「このままだと回らないって」
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電話が切れる。
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社長の手、震える。
「……言ってないぞ、そんなこと」
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現場。
沖が戻ってくる。
沖「…聞いたで」
林田「なんて?」
沖「“人おらんから無理や”って、あいつが断っとった」
長松「え…勝手に!?」
廣川「…筋通っとるようで、一番汚いな」
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さらに――
別の隊員が走ってくる。
「林田さん!あの現場…!」
林田「どうした!?」
「会社名、変わってます!」
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全員で向かう。
そこにあったのは――
見覚えのある配置。見覚えのある導線。
ただ一つ違うのは、
看板。
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「ダークコネクト」
見たことも聞いたこともない名前。
ダーク、、?
闇?
コネクト、、、?
繋ぐ、、?
闇で繋ぐ、、?
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長松「……うそやろ」
林田「丸ごとやないか…」
廣川「…完全に移行されとる」
天音「ふふ、綺麗にお引越しだねぇ」
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沖、看板を睨む。
「……全部、あいつや」
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点と点が、繋がる。
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・妙に広がっていた“潰れる噂”
・辞める前に増えた不信感
・急に減った現場
・理由のない契約終了
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全部――
大和田獏郎。
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社長室。
社長が一人、椅子に座っている。
机の上には、解約通知の山。
その一番上に、メモ。
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「人員不足のため継続困難と判断」
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社長「……誰が判断したんや」
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沈黙。
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ドアが開く。
沖が入ってくる。
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沖「社長」
社長「……なんや」
沖「全部、あいつです」
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社長、顔を上げる。
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沖「噂も、契約も、現場も」
沖「全部、大和田獏郎がやっとる」
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社長の目が揺れる。
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社長「……証拠は」
沖「辞める2ヶ月前から会社の法人登記設立してます。」
社長「なんやて…。」
社長「俺は昔、辞める日にあいつに聞いたことがあるんや。」
沖「何をですか?」
社長「パンダを辞めたらどうするんやと…。」
沖「その時、大和田はなんて言ってたんですか…?」
社長「俺には真顔で警備会社なんかしないと…。」
「辞めたらゆっくり考えると…。」
「おまけに何のことですか?」とまで言われたわ。
沖「それは本当ですか?」
社長「本当や。」
社長「だったらあれは全てなにもかも嘘だったのか…。」
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社長、膝から崩れ落ちる。
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一瞬の間。
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沖「全部“闇で繋がってます”」
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その言葉だけで、十分やった。
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社長、ゆっくり立ち上がる。
「……そうか」
拳を握る。
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社長「ほな、終わりやないな」
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外。
風で揺れる「パンダ警備」の看板。
色褪せている。
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林田「…どうするんですか」
沖、静かに言う。
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「取り返す」
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天音、笑う。
「やっと始まるねぇ」
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その頃。
ダークコネクトの事務所。
新品の机。
整った名簿。
順調に回る現場。
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その中心にいる男。
大和田獏郎。
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獏郎「パンダは終わりや」
コーヒーを一口。
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獏郎「次は、俺の番や、俺の時代や!」
「グググ…ヒッ…ヒヒヒ…キィィィィ…ヴハハハハ…………。」
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今日も1日御安全に!!!🐼