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2026/06/09パンダ警備百点会⑤『白黒つけられた男』

大和田獏郎が再び現れたのは、

昼下がりだった。

現場は片側交互通行。

いつも通り、どうでもいい時間。

突然のにわか雨が激しく不気味に通り過ぎた。

止み終わったその直後だった、、。

まだ辺りは異常なくらいに暗い…。

「クククククッ……お疲れ様です」

振り向いた林田は、

一瞬だけ固まった。

「……お前か」

黒いマオカラースーツ。

ピカピカのエナメル靴。

そして、いつもと変わらない無表情。

大和田獏郎。

周りの隊員たちは、妙に静かになった。

天音だけが、なぜか笑っている。

⸻

「今日は勧誘じゃない」

獏郎は、そう言った。

「……じゃあ何しに来た」

林田は、いつもの強気で返す。

だが、ほんの少しだけ声が硬い。

獏郎はポケットからタバコを出しかけて、やめた。

現場ルールを守っている。

それが逆に不気味だった。

⸻

「クククッお前を引き抜かなかった理由を、教えに来た」

その一言で、

空気が変わった。

野高が小さく「えっ」と声を漏らし、

廣川は旗を落としかけた。

林田は笑った。

「はは、やっと評価か。遅いんじゃないか?」

獏郎は、即答した。

「違う。クククッ評価はとっくに終わっている」

⸻

沈黙。

⸻

「結論から言う」

獏郎の目は、一切ブレない。

「クククッ林田、お前だけは戦力外だ」

「お前とは会った時から最初から戦力と

して見ていないがな。ククク…。」

「お前は使いものにならないんだよ」

「アハハハハハハハ!!」

⸻

誰も動けなかった。

風の音だけが、やけに大きい。

⸻

「……理由は?」

林田の声は、思ったより落ち着いていた。

怒りでもなく、焦りでもなく、

ただ確認するような声。

⸻

「三つある」

獏郎は指を一本立てた。

「一つ。感情で動く」

二本目。

「二つ。無駄に現場に残る」

三本目。

「三つ。仲間を捨てられない」

⸻

林田は、笑った。

「それの何が悪いんや!大和田!!」

⸻

獏郎は少しだけ間を置いた。

「全部だ」

⸻

野高が、息を呑む。

沼田は、珍しく起きている。

天音は、ずっと笑っている。

梅おにぎり師匠はおにぎりを食べ続けている。

⸻

「俺の会社に必要なのは、交換できる人間だ」

「壊れたら替える。迷わない。止まらない」

「お前は違う」

⸻

林田の目が、ほんの少しだけ細くなる。

⸻

「お前は、止まる」

「誰かのために」

「意味もなく」

⸻

沈黙。

⸻

そのとき、無線が鳴った。

「はい、林田です」

いつもの声。

何も変わらない声。

⸻

「了解、送ります。」

旗を上げる。

車がゆっくり動き出す。

⸻

獏郎は、それを見ていた。

じっと。

⸻

「クククッ……だからだ」

小さく、呟く。

⸻

林田は振り返らない。

「用件それだけか?」

⸻

「終わりだ」

「安心しろ。クククッ…最初からお前は数には入れていない。」

「お前ぐらいはいくらでもいる。」

「無限にな。ブハハハハ。」

「ククク……林田。」

「次に会う頃には、もっと静かになってるだろうな。ケヒッ…。ケヒヒヒヒ…。」

⸻

獏郎は背を向けた。

去り際、天音の横を通る。

天音は、くすっと笑って言った。

「ねぇ、獏郎さん」

足が止まる。

⸻

「それ、“戦力外”じゃなくてさ」

少しだけ首を傾けて、

「一番厄介って意味でしょ?」

⸻

獏郎は答えなかった。

だが、ほんの一瞬だけ、

口元が動いた。

「ンフ……。」

⸻

去っていく背中。

⸻

林田は、最後まで振り返らなかった。

ただ、旗を振りながら、

小さく呟いた。

「……上等や」

⸻

車の流れは、止まらない。

白線の上に、立ち続ける男がいる。

今日も1日御安全に!!!🐼

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