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2026/06/12パンダ警備百点会⑥『部品になれない男』

休日だった。

林田は近所のスーパー「今日でぇ〜?」で買い物をしていた。

カゴの中には、カップ麺、半額シールの貼られた惣菜。お菓子。グミ。

平和な昼下がり。

そのはずだった。

「クククッ相変わらず安いものを選ぶな」

背後から声がした。

林田の顔が曇る。

振り向く。

黒いマオカラースーツ。

休日のスーパーにまったく似合わない男。

大和田獏郎だった。

「……お前か」

「久しぶりだな林田…クックックックック」

獏郎のカゴには何も入っていない。

買い物に来たわけではない。

最初から林田を見ていたような目だった。

「何の用や」

「別に」

獏郎は牛乳売り場を眺めながら言った。

「ただ、パンダ警備の話を思い出してな」

林田は嫌な予感しかしなかった。

「クククッ面白い会社だ」

獏郎は笑った。

だが目は笑っていない。

「壊れかけた人間が、壊れかけた人間を支えている」

「効率は悪い」

「利益も薄い」

「経営としては最低だ」

林田の眉が動く。

「それでも現場は回っとる」

ヌフっと獏郎は首を傾けた。

「回っている?バハハハハ」

まわりに聞こえるように笑う。

「違う」

「倒れないように支えているだけだ」

惣菜コーナーの蛍光灯がやけに白かった。

「今谷は不安定」

「長松は焦りやすい」

「天音は何を考えているか分からない」

「沖は抱え込みすぎる」

「野高は方向音痴」

「津崎はキレやすい」

「沼田は寝てるだけ」

「本間は資格証を首から紐でぶら下げているだけ」

一人一人の名前を挙げる。

まるで商品を評価するように。

「そしてお前だ林田クックックックック」

獏郎はまっすぐ見た。

「お前は全員を背負おうとする」

「だから一番壊れやすい」

林田は黙る。

獏郎は続けた。

「会社というのはな」

「壊れた部品は交換する」

「使える部品は残す」

「それだけだ」

林田の手がカゴを強く握る。

「人間やぞ」

獏郎は即答した。

「会社の中では違う」

沈黙。

スーパーのBGMだけが流れている。

「お前らは勘違いしている」

獏郎は言った。

「仲間だの絆だの言うが」

「事故が起きれば責任者を探す」

「赤字になれば人を切る」

「会社なんて最後はそういうものだ」

冷たい声だった。

林田は吐き捨てる。

「だからお前には誰もついてこん」

獏郎は少しだけ笑った。

「違う」

「ついてくる必要がない」

「結果だけ残ればいい」

その言葉に寒気が走った。

人ではなく数字。

仲間ではなく結果。

獏郎の世界にはそれしかない。

去り際。

獏郎は半額シールの惣菜を見た。

「それ、買うのか」

「ああ」

「そうか」

そして小さく呟いた。

「お前は昔から捨てられん」

林田が顔を上げる。

獏郎は背を向けていた。

「ブハハハハ…だからお前は戦力外なんだよ」

そのまま人混みに消えた。

スーパーには何も起きていない。

客も買い物を続けている。

だが林田だけは動けなかった。

カゴの中の半額惣菜を見ながら、

小さく呟く。

「……それでも捨てんわ」

誰にも聞こえない声だった。

今日も1日御安全に!!!🐼

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