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2026/03/02『白と黒の勤務評定』

パンダ警備合同会社の朝礼は、

だいたい静かだ。

理由は簡単だ。

誰も本気で仕事をしていないからだ。

現場は片側交互通行。

しかし誘導棒は地面に置かれ、

警備員はスマホで動画を見ている。

その中心にいるのが、

沼田(通称:寝パンダ)

立っているだけ。

動かない。

誘導しない。

ただ、立っている。

白い腹を前に突き出し、

目は半分閉じている。

「仕事、してる?」

背後から声。

振り向くと、

主任の林田。

顔は笑っている。目は笑っていない。

「してますよ」

沼田は言う。

何を?

と、誰もが思う。

その日の午後。

本社から「特別指導」が来る。

会議室に呼ばれた沼田。

壁は白。

机も白。

椅子も白。

正面に座るのは、社長。

パンダの着ぐるみ。

口元だけが、本物の人間。

「沼田さん」

低い声。

「君は、なぜ動かないのかね」

「いや、立ってます」

「立っているだけだ」

沈黙。

社長はメモを取り出す。

【勤務評価:置物】

「置物……ですか?」

「置物は、そこにあるだけで意味がある。

君は?」

沈黙。

社長が静かに立ち上がる。

着ぐるみの頭を外す。

中から出てきたのは――

もう一枚のパンダ。

さらに外す。

またパンダ。

また。

また。

中身が、ない。

「パンダ警備とは何か、わかるかね」

社長の声は、どこからともなく響く。

「白は建前。黒は本音。

 働いている“ふり”が、最大の仕事だ」

会議室の壁が回転する。

そこには――

立っているだけの警備員が、

何百人も並んでいる。

全員、微動だにしない。

「これが、理想の警備だ」

沼田の胸ポケットに、

赤い誘導棒が差し込まれる。

「動くな。

 考えるな。

 存在するな。

 だが、給料はもらえ」

沼田は気づく。

自分の足が床に固定されていることに。

動かないのではない。

動けない。

「これが指導だ」

翌日。

現場。

沼田は立っている。

微動だにせず。

車は勝手に止まり、勝手に進む。

なぜか事故は起きない。

通行人がつぶやく。

「あの人、なんか怖いね」

主任がメモを書く。

【勤務評価:完成】

パンダ警備は、今日も安全だ。

たぶん。

今日も1日御安全に!!!🐼

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